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update:20231022

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公園のベンチ

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想起

美術鑑賞は自身の記憶との対話でもある。

それは、トリガー。

好んで度々訪れる施設庭園の散策で、竹林を前にして足を止めた。
そこには以前、施設の企画展で美術作品が展示されていた。
その光景が蘇る。
今は作品が置かれていない。
今は無いものをそこに置いて観る。
脳裏に置かれたあの時の美術作品が視えてきた。
わたしは何を追っているのだろう。

対話の記憶が上書きされていく。
それらは必ずしも言葉とは限らない。
言葉ではもの足りなさを覚える情感に包まれる。
もどかしさの中で、心地良い。

記憶は渦となって湧き上がり、波の振動が干渉を描く。
干渉は、重なりながら揺れ戻りを繰り返す。
それは無意識の領域で波紋する。
わたしは映像化された無意識を視る。

そこに感情の粒子が周回していく。
想起には感情が絡み合うのだ。
わたしのポケットの中で。

真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

これを、ここに、置いてみたわ。
美しいね。
ただそれだけの幸せ。
でも、今はもう無い。

2023/10/22