ポケットが揺れている。
何かが動いている。
そっと手を入れてみた。
渦、だった。
手に感触する渦。
渦が手を撫でる。
渦は指の間に間に絡んでいく。
右巻きに、左巻きに。
干渉して、
増幅する渦、打ち消し合う渦。
すべては時の紋様。
渦はわたしのポケットの中、
渦はわたしの所持品、
渦はわたしを知っている、
わたしは渦を知らない、
渦はわたしの所持品、
記憶という名の所持品。
記憶の中で生きている。
記憶の中の公園。
記憶の中のベンチ。
記憶の中のあなた。
記憶の中のわたし。
記憶の紋様。
真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。
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