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update:20220608

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公園のベンチ

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気袋

真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

乳母車を引く、老婆。
闇の中から現れた。
ゴロゴロと近づいて来る。

こんな夜中に老婆が散歩?

ゴロゴロと音もなく近づいて来る。

老婆はわたしの前で乳母車を止めた。

「もし。気を分けてはくださらんか。」

やぶからぼうだった。

「気を集めておってのぉ。あんたの気を分けてはくださらんか。」

奇妙ではあるが、危害はなさそうだ。

「気?....ですか?」

「そうじゃ。あんたの気じゃよ。」

「分ける....と言っても、わたしにはどうしたものかわかりません。」

「この袋に気を吐くだけじゃ。」

「気?を?....ですか?」

「息を吐くだけじゃよ。それで気が取れる。」

「へ?....気とはそういうものなんですか?」

「わしは、そうやって集めておる。」

老婆はわたしに気袋を差し出した。

なんの仕掛けも無い透明なビニール袋だった。

「わかりました。やってみます。」

わたしは気袋の中へ息を吹き込んだ。

老婆はひょいひょいと気袋の口を輪ゴムで塞いだ。素早い一瞬の動作だった。

「ありがとさんね。」

そう言って、老婆は気袋を乳母車の中に入れた。

「達者でな。」

そう言うと、老婆はゴロゴロと乳母車を押しながら闇の中へと消えて行った。

わたしの、気。

気を集めてどうするのだろう?

聞き忘れた。

わたしは両手で窪みを作って、気を吐いてみた。

掌がかすかに温かい。

これを集めているのか....。

わたしもサンプルのひとつ、ということか。

あのばぁさん、いつから集めているんだろう....。

2019/10/02