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update:20220608

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公園のベンチ

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まどろみ

身体の細胞が少しづつ意識と結びついていく。
瞳は瞼の中で目覚めをぼんやりと自覚する。
肩から腕へ指先へとジンジンと熱い。

どれだけ眠っただろうか?
まだ、半分は眠っている。
しばらくは、眠気に身を任せておこう。
すっかり目覚めるまで。

わたしは眠っていた。
今、目覚めようとしている。
このまどろみの中で。

眠り人が展開するおぼろげな残像。
脈絡のないスライドショー。
雑踏の中で絡み合うノイズ。

その奇妙な展開が不思議と心地よい。
現実ではない、夢の中での出来事。
という安心感。
この展開の先に、きっとまだ何かがある。
という期待感。

わたしは「眠り」の中のわたしを知らない。
その「眠り」はわたしの中にある。

わたしは眠りの中へ落ちていった。
わたしの中の眠りに落ちるわたし。
わたしの中の眠りに落ちたわたし。
わたしが知り得ないわたしをわたしが内包している。
不思議な構造だ。

わたしはわたしをわたしの中に探している。

でも、やっぱり探しきれない。
いつものことだ。

期待は叶わず、目覚めを迎える。
一瞬のこと。
ぼんやりのすべてがかき消される。
いつでもそうだ。

奇妙な展開が織りなす幻影は、
持ち帰ろうとするも、
決して記憶には残らない。
いつでもそうだ。

幻影は実在する。
わたしはそう思っている。
ただ、五感では感知できない。
脳は眠らない。

わたしは一人きりの時間が欲しい。
それを満たしてくれるのは「眠り」だけ。
わたしがわたしと対峙する時間。
わたしはそんなわたしを生きている。

眠りは繰り返される。
わたしの手の届かないところで。
五感の記憶を重ねながら。

わたしは、真夜中の公園のベンチに横たわっている。

真夜中の公園は相変わらずベンチが点滅している。いくつかの灯りが消え、いくつかの灯りが点く。ベンチに座る人、ベンチを立ち去る人。そんな光景が遠く彼方にまで繰り広げられています。わたしのベンチもまた、彼方からは点滅するベンチのひとつとして映るのでしょう。

2019/07/04